動物医療業界はこう変わっていく【1】従業員の雇用形態変化

動物医療業界(動物病院市場)はこう変わっていく〜動物看護師が国家資格になる〜

2019年6月21日に愛玩動物看護師を国家資格とする法案が全会一致で参議院を通過、可決しました。
さらに2020年10月9日、その愛玩動物看護師法の施行日を、2022年5月1日とする政令が閣議決定されました。
よって、最初の国家試験は、2023年2月末から3月までの間に実施する予定となりました。

現在の動物看護師の最高資格は内閣府認定資格である「認定看護師(動物看護師統一認定機構)」である。

動物看護師業界ではこれまで、いろいろなことがあった。

そもそも動物看護師資格は「認定看護師」ができるまで民間の簡易的な資格しか存在しなかった。そのため、2012年ごろまでは動物病院の勤続年数2年以上を条件に看護師に受験資格を与え、認定看護師を増やすに至った。当時は認定看護師とは取っておいた方がよさそうだね、というくらいの趣味範囲に近い資格と認識している方が大半であったと認識している。この私もそうだった。

しかし、その5年後となる2017年には、認定看護師資格は専門教育を受けている者が取得できる資格と変化を遂げた。
特異措置として「学び直し受験」というその時点で受験資格を持つ看護師や、認定試験に不合格であった看護師を指定学校へ半年通わせることで専門教育の卒業と同等の知識を得る者として認定看護師の再受験を行わせる措置をとった。

今学び直し受験をおこなった一人が、この情報を筆している私自身である。

そしてその学び直し受験から2年後の2019年。次は国家資格へと変貌を遂げるのである。

 

前提として、民間で取得できる看護師の知見領域と、認定看護師の領域は天と地の差があるほど異なる。簡易に例をいえば、民間で取得できる看護師のテキスト内容は犬の起源と犬の種類、感染症の種類程度であるのに対し、認定看護師のテキストは医学部の教科書である。
私が特に衝撃を受けたのは自身の勤務する病院にない機械と器具を使った術式や検査、扱ったことのないエキゾチックアニマルの保定と生体、さらにいえば通常多くの動物病院に来ない牛、馬、ヤギ、綿羊も範囲に加えられる点である。

私が看護師として働き始めたのは21歳の頃。その当時上司といえば30代後半の方が多かったと今も覚えている。学び直しを言い渡された時点で、当時の上司はおおよそ40代半ばとなっていることだろう。

私が慕い、教えを教示して頂いた方々は、
それまで10年以上も従事してきた仕事が「認定看護師」に奪われることになるかもしれない状況に立たされた。
特に給与面からいえば認定看護師には資格手当が出るが、民間の資格しか持っていない看護師に資格手当は出ない。
しかし、現時点では自身が従事していくにあたって不足がないところに立っているのに、範囲の広い医学領域を学び直すか?と問われるととても難題であったと思う。

自身でさえ受験勉強に半年を要したのも記憶に新しい。

 

そんな選択を強いられた2年後、次はその認定看護師が最も最低知見領域とされる「国家資格」が出来上がった。

衝撃を受けることとなるのはその資格手当の平均予想金額だ。
認定看護師の資格手当が月5,000円であったところ、国家資格は月30,000-50,000円と予想されているという情報。これには動揺が隠せなかった。

認定看護師と国家資格保持者の違いとは何か。
今まで獣医のみが許されてきた施術範囲を小規模国家資格保持者が可能になる点である。

そのためにもう一度範囲を広げて学び直すのか。
現場では問題なく仕事をこなせ、スキルはあるのに、給与が圧倒的に変わる。
十分にスキルのある自分ではなく、新入りの国家資格保持者が施術にあたるのか。
それは大丈夫なのか。
現動物看護師の皆様には、大きく、そして複雑な衝撃が飛び交ったことと思います。

この変化は動物看護師の方だけが重要視する問題ではない、
看護師に変化があることは、病院の従業員雇用形態、採用、人事、そして経営、事業自体に大きく影響を及ぼすこととなるからだ。

今、ある情報を少しまとめてみよう。

動物看護師国家資格について
<基本の受験資格>
・大学で指定の科目を修めて卒業した方
・愛玩動物看護師養成所(つまり専門学校など)で3年以上必要な知識技術を習得した方

<現在動物看護師である方の受験資格>
法律の施行から5年間は、現職の方や、法律施行のタイミングで学校に通っている方のための経過措置が規定されることを前提とし、
・動物看護に係る業務に累積5年従事している方もしくは
・愛玩動物看護師として必要な知識・技能の修得を終えた方 →これが認定看護師

なお、実務経験とは「原則として、雇用契約に基づいて業務に従事した期間(例えば常態として週1日以上の勤務であった期間)とする。(実務経験の5年は連続した5年である必要はなく、業務に従事した期間が通算5年以上であればよい)

<現在動物看護師の方のみに課される予備試験>
現在動物看護師であり、受験資格のある方は30時間程度の講習会と予備試験(本試験よりも平易なもの)に合格することで国家試験受験資格が与えられる。

<民間業者模擬試験の実施>
民間業者がここぞとばかりにテキストの制作や模擬試験の実施などに勤しんでいる。
しかしこれは本部に関係のない民間業者がおこなっている者である以上、
正確な判断基準になるか、正確なテスト範囲となるかは未知である。
メディアリテラシーを持って臨むべきである。

<申込打診メールの送付>
12月初旬、認定看護師登録者へ「国家資格予備試験申込」の打診メールが送付された。
国家資格受験の意思、現状確認、希望の予定申込日をアンケート式で送付させるものである。

<本部も判断しかねている問題が多発している現状>
現在、テストを一括して任され運用する統一機構の本部でも判断ができず、決定に至っていない事項が複数存在する。
例:5年以上勤務した病院がすでに閉鎖されており、病院から就業証明を出すことができない場合
の措置
など

 

以上のことが現状大まかにわかっている情報である。

看護師の皆様、テストに目がいくと思います。
動物医療業界(動物病院市場)に従事している皆様、でも少し待ってください。

それだけに目を向けないでください。

そのテスト受ける必要性を考えてみませんか?

この先市場や環境がどう変わるのか。それを知って、考えてみませんか?

 

つづく

ペット事業最前線Column